洋上風力発電のメリット・デメリットとは?

近年、再生可能エネルギーへの注目度が高まっていますが、その中でもヨーロッパを中心に普及が進んでいるのが風力発電です。
風力発電は、文字通り風の力を利用して発電を行いますが、簡単な原理としては、まず風の運動エネルギーを風力タービンによって回転エネルギーへと変換します。
そして、その回転エネルギーを直接、もしくは増速機を経由して発電機へと伝送することで電気エネルギーを得ています。

二酸化炭素を排出することなく電気を生み出すことが可能

また、風力発電は、太陽光発電やバイオマス発電、水力発電などの発電方法と同じく、二酸化炭素を排出することなく電気を生み出すことが可能です。
二酸化炭素は、温室効果ガスの中でも最も地球温暖化に影響を与えていると言われているため、風力発電を導入することで地球温暖化の進行を緩和することができます。
また、日本において最も普及している再生可能エネルギーは太陽光発電ですが、太陽光発電は夜間や悪天候時に発電できないという問題があります。
一方で、風力発電は風さえ吹いていれば、時間や天候に左右されずに発電することが可能です。
加えて、風力発電は再生可能エネルギーの中でも比較的発電効率が高いというメリットもあります。
発電効率とは、入力エネルギーに対して得られた電気エネルギーの割合のことを指します。
一般的な太陽光発電システムの発電効率は約20%とされていますが、風力発電の発電効率は約30~40%ほどとなっているため、太陽光発電よりも効率的に電気を得ることが可能です。

風力発電の分類

以上が風力発電の代表的なメリットとなりますが、風力発電は大きく陸上風力発電と洋上風力発電の2種類に分けられます。

陸上風力発電

陸上風力発電は、陸上ウィンドファームとも呼ばれており、主に山岳地に設置させるケースが多いです。
日本では北海道や東北、九州などに多く設置されていますが、十分な風を確保できる土地が限られるという問題があるとともに、発電時に大きな騒音が発生するというデメリットがあります。

洋上風力発電

そこで注目され始めたのが、洋上風力発電です。
洋上風力発電は、文字通り海洋上に発電設備を建設し、海の上で発生した風で発電しますが、海洋上に発電設備を設置するメリットは主に3つあります。
まずは、安定した発電が可能なことです。
海洋上は、陸上よりも安定して強い風が吹いていることに加えて、風を遮るものがないため、陸上風力発電よりも多くの電気を安定して生み出すことができます。
また、海洋上に施設を建設することで、騒音問題のリスクを軽減できるというメリットもあります。
さらに、陸上の場合、施設を建設できる場所や数が限られますが、海洋上であれば施設設置を阻害するものが存在しないため大型の設備でも容易に建設することが可能です。

Influx 洋上風力

洋上風力発電のデメリット

一方で、洋上風力発電にもデメリットは存在します。
まず挙げられるデメリットは、多額の建築コストがかかることです。
海洋上に施設を建設する場合、陸上においてある程度部品を組み立てておき、それを海洋上へと輸送することで施設を建てていきます。
部品の輸送コストは陸上よりも低いとされていますが、クレーンなどの大型機器を運ぶ必要もあるので、建築コストは陸上よりも高くなる傾向があります。
加えて、発電した電気を陸上まで届けるための海底送電ケーブルも必要になりますが、この海底送電ケーブルにもかなりのコストがかかります。
また、メンテナンスが難しいのもデメリットです。
洋上風力発電は、陸上風力発電とは異なり、作業員が簡単に施設まで行くことができません。
特に、悪天候時にトラブルが発生した場合、作業員が現場へ駆けつけるのが遅れて状況が悪化する可能性があります。
さらに、海洋上に施設を建てることで、漁業への影響が出るのではないかという懸念も指摘されています。

洋上風力発電は着床式と浮体式という2種類に分けられる

なお、洋上風力発電は着床式と浮体式という2種類に分けられます。
着床式は、基礎を直接海底に埋め込んで固定することで建設される施設で、通常は水深が50メートルより浅い場所に建設されます。
現在、ヨーロッパなどで実用化されているもののほとんどは着床式ですが、特にイギリスやデンマークなどの遠浅の海岸が多い国では、着床式の施設の導入が進んでいます。
一方の浮体式は、海洋上に浮かぶ構造物を建設し、その構造物をワイヤーを使い海底に固定したアンカーに繋ぎ止めるタイプの施設です。
水深が50メートル以上の場所にも建設できるため、より広い海域での発電が可能となります。
浮体式の施設は、ノルウェーやポルトガルなどの国で実証研究が行われています。

まとめ

着床式と浮体式のどちらを建設すべきかは、周辺海域や気候などの条件によって異なりますが、基本的に日本では浮体式の方が適しているとされています。
その理由としては、着床式は台風などの被害を受けやすいことや、日本には遠浅の海岸が少ないためです。
ヨーロッパなどでは着床式が主流ではありますが、日本においては今後浮体式の施設が普及していくでしょう。

最終更新日 2025年4月25日 by matsuu